これは、少し前、2015年10月20日のはなし。
サイって愛らしくて、臆病で、セクシーなんだと初めて知った。
多摩動物公園には3頭のインドサイがいる。
ター、ビクラム、ナラヤニ。
ターはスイスからやって来た。
目の前に生えてくる角をこするのが好き。角をこすることで、強いんだぞとアピールしている。
柵でもドアでも木材でも金属でもおかまいなしにこするから、角がとっても短いオス。
サイの角は、毛の一部がとっても硬くなってできている。
どんどん伸びてくるけど、ターのこするスピードには追いつけてないんだね。
インドサイは絶滅危惧種。レッドリストに乗っている。
もともとは、インドやネパールの湿地に生息していた。
1800年〜1900年代に、サイの角は漢方薬になると信じられ、サイの乱獲が起こり一気に数が減少。
一時期は200頭まで減ったという。
そこでようやく人間たちは気付き、保護に向かった。今は2000頭ほどが生息している。
ビクラムとナラヤニは、2001年多摩動物公園にやって来た。
野生で生まれた2頭のサイは、迷子になり保護され、ネパールから日本にやってきた。
インドサイの体重はおよそ2トン。
皮膚は硬くて重い。鎧のよう。
面白いことに、鎧の皮膚にはツナギ目があって、そこは赤っぽくて柔らかいらしい。
ツナギがあるから鎧いみたいな皮膚でも滑らかに動ける。
インドサイの世界では、オスは5才、メスは10才で大人。
現在14才の2頭のサイは、成熟して、お見合いをしている。
今日、ナラヤニ♀は、45日に一度の発情期を迎えていた。
よくないたり、仲間にメッセージを残すため頻繁におしっこをしたら、発情期の合図。
普段は大人のサイは一人暮らしだが、発情期になると、2頭のサイは同じ空間で過ごす。
ともにネパールから来たビクラムとナラヤニ。
ナラヤニ♀が一歩リードしてアプローチが始まる。
お互い向かい合って、角を擦り合わせたり、コーンコーンとぶつけ合う。
興奮すると血がにじむくらいはげしいイチャつき合いをする。
通常は、しばらくして、メスが走り出し、オスが追いかけ、交尾にいたる。
だが、ビクラム♂は、ナラヤニが走り出しても追いかけない。
実はビクラム、3年前は足が震えて角を擦り合わせることもできなかった。
そう思うと一歩ずつ成長している。
その後も何度かビクラムとナラヤニは角を付き合わせては、離れ、
付き合わせては、少し追いかけられるようになり、離れ、
付き合わせ、を繰り返した。
ビクラムは野生で生きていた小さい頃、トラに襲われたことがある。
耳が切れているのはそのせいだ。
トラウマがあり、周りの環境に敏感になったり、行動が慎重になったりしているそうな。
ビクラムが離れてしまって置いてけぼりのナラヤニは、一人いじけて水の中へ。
水の中にいる時も耳はクルクル動く。
サイは目が良くない分、耳と鼻は利く。
ラッパのような耳は、クルクルと180度動くし、片方ずつ動かせ、興味のある方へピッと向く。
水の中でいじけてるナラヤニの耳は、ビクラムのいる方向に注意を向けられていた。
ビクラムがおそるおそる水の中へやってきた。
今度は水の中で角を付き合わせる。
うっとりしちゃうくらい、いい雰囲気。
今度はビクラム追いかけられるか。
ナラヤニが走り出した。
ビクラムも動き出した!
あ、違う方へ。
周りで見ていた水鳥たちもこの時ばかりは声を上げてブーイングしていた。
なんかドラマを見てるようで、おかしくなっちゃった。
つづく。
※2018年3月17日現在は、カップリング相手が変わり、ナラヤニとターの組み合わせ。
ナラヤニの発情期が来るまでは、柵越しにお互いの存在を確認してるみたいだった。
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